NDRの報道では、Dariusが1984年にNDRラジオで流れた曲をカセットに録音し、妹のLydiaが2007年に短い音源をインターネットのフォーラムへ投稿した。曲名も歌手名もわからないまま、そこから長い捜索が始まった。

この捜索が不気味なのは、音が残っているのに、その音がどこから来たのかだけが消えていたことだ。声は聞こえる。楽器も聞こえる。けれど、ジャケットも放送記録も、検索エンジンの結果も、曲を持ち主のもとへ返してくれない。

曲名が判明したあと、FEXのデモテープも見つかった

NDRの2024年11月の報道によれば、オンラインの調査者がFEXの元メンバーに連絡し、曲は同バンドの「Subways of Your Mind」だと特定された。作曲者はTure Rückwardt。FEXは1983年にこの曲を録音していた。

音源が帰る場所は、ファイル名ではなく、誰かの記憶の中にあった。

解決後も、すべてが消えたわけではない。ネットに残る断片は、録音された瞬間、放送された瞬間、カセットに保存された瞬間、そして再発見された瞬間を別々に持っている。ロストメディアの発見とは、失われた物を取り戻すことではなく、断片の間にあった時間を復元する作業なのだ。

「聞いたことがある」は証拠にならない

捜索の初期には、似た曲名や別のバンド名が候補として浮かび、動画の再生数が手がかりの強さと誤解されることもあった。音が本物らしいほど、記憶による照合は危うくなる。自分が昔ラジオで聞いたという感覚と、録音が実際にどこで放送されたかは、別々に確かめなければならない。

曲の特定を支えたのは、元メンバーの記憶と、FEXが1983年に録音したデモ、1985年のライブ記録との照合だった。

2024年のクリスマス後、Hädrichは自宅の200本以上のカセットが入った箱から、FEXの文字とHädrich自身、バンド仲間のTure Rückwardtの住所が書かれたテープを見つけた。これはDariusが使った1984年の放送録音カセットではなく、FEX側に残っていたデモテープだった。

Hädrichはネット上の音源と重ね、同じアナログ録音だと確かめた。放送録音で欠けていた冒頭のドラム二打も、このテープには残っていたという。

捜索の発端となった放送はNDRラジオだったが、番組名は特定されていない。NDRの放送記録をもとに、1984年9月初旬ごろという時期が推定されている。

曲名はGEMA未登録で記録に残らず、「Der Club」は候補の一つにすぎない。NDRの記事でも、放送番組やFEXのテープが局へ届いた経緯は未解決としている。

出典と確度

曲の特定、Dariusによる録音、Lydiaによる2007年の投稿はNDRの2024年11月記事、FEXのデモテープ発見と放送の未解決点はNDRの2025年1月記事を参照しています。FEX公式の発売ページにも、1983年録音のデモについて記載があります。音源や歌詞は転載せず、発見経緯だけを要約しています。
NDR / FEX plays the song after 40 years NDR / FEX demo tape found FEX / Official release